2011年3月の東京電力福島第1原発事故による全町避難が続く福島県大熊町で、政府の原子力災害対策本部は、一部地域の避難指示を4月10日に解除することを正式発表しました。
第一原発が立地する同県双葉町、大熊町での避難解除は初めてです。
避難指示が解除されるのは、居住制限区域大熊町大河原地区と、避難指示準備区域の中屋敷地区。
対象となるのは、およそ138万世帯367人と町の全人口のおよそ3パーセントとなります。
4月14日には新庁舎の開庁式があり、新たに作られた50戸の復興公営住宅は6月から入居が始まるなど、原発事故から8年が過ぎてようやく、第一原発が立地する大熊町で明るい兆しが見えてきました。
避難指示解除の理由は?
それではなぜ今回、避難指示が解除されたのでしょうか?
今回の避難指示解除は、3月26日に行われた政府の原子力災害対策本部と、町・県が協議し、合意に至ったという経緯があります。
磯崎本部長は、記者会見の際に除染により放射線量の低下や電気、ガスなどのインフラ状況が「避難指示を解除する要件を満たしている」と述べました。
そもそも、避難指示解除の基準とは何でしょう?
①空間線量率で推定された年間積算線量が20ミリシーベルト以下となることが確実であること
②電気、ガス、上下水道、主要交通網、通信等日常生活に必須なインフラや医療・介護・郵便等生活関連サービスが概ね復旧すること、
子供の生活環境を中心とする除染作業が十分に進歩していること
③町、市町村、住民との十分な協議
これらが環境省の提示する避難指示の解除基準となります。
今回の避難指示解除は、これらの基準が満たされたと判断されての判断とされています。
これからの課題
今回の避難指示解除は、復興への大きな第一歩となりますが、まだまだ課題は残されています。
今回避難指示が解除されたのは、3種類ある避難区域のうち、居住制限区域と避難指示解除準備区域のみ。
放射線量が高い帰還困難区域の避難指示は継続します。
避難指示解除準備区域⇨復旧・復興のための支援策を迅速に実施し、住民の方が帰還できるための環境整備を目指す区域
居住制限区域⇨将来的に住民の方が帰還し、コミュニティを再建することを目指し、除染を計画的に実施し、早期の復旧が不可欠な基盤施設の復旧を目指す区域
期間困難区域⇨放射線量が非常に高いレベルにあることから、バリケードなど物理的な防護措置を実施し、避難を求めている区域 |
同地区内の商業施設や福祉施設等はいずれも2020年に開所予定で、このため町は当面の間コンビニや、商業施設、医療機関のある富岡町内の車両の運行などで対応していく予定です。
多くの人が「住みたい」と感じられる安心安全な街づくりのために、復興への時間軸を示し、将来への不安を減らす取り組みが行われています。
出典:河北新報社より
復興への明るい兆しはこんなところにも
避難指示解除の他にも、大熊町には明るいニュースが舞い込んでいます。
最近では、常磐自動車道大熊インターチェンジが3月31日に開通しました。
そして2020年3月には、大熊町というより福島県や宮城県にとっても明るいニュースで、東京と宮城県を結ぶ常磐線が開通する見込みです!
常磐線は津波により、駅舎や路線が流出するなど莫大な被害を受けました。
かつて東北の人々の貴重な足であった常磐線。
震災から8年…
その線路の復旧というのは、東北の人々の心に光をともすに違いありません。
まとめ
8年目、突然襲った震災により、多くの人の命が奪われ、東北は悲しみに包まれました。
自然災害とはいえ、家族や親族、友人を突然失う悲しみ。
生まれ育った故郷に住めなくなるという事実。
それでも、残された人たちでこの8年間、1日も早い復旧に向けて人々は前に進み続けました。
課題はまだまだ残されていますが、生まれ育った大好きな故郷を取り戻そうと今日も頑張る人たちがあってこその復興です。
その中での「大熊町の避難解除」というのは、ずっと曇っていた空に一筋の光が差し込むような知らせだったと思います。
大熊町では、2022年春までには全体の避難指示解除を目標に、これからもインフラ整備や復興作業が進められていきます。
人の温かさや心が解される訛り、雄大な自然に温泉、豊かな土地で育ったリンゴや桃が絶品の福島県。
1日も早い復興と人々が平和に暮らせる日を願って。